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「どうしようもないもの」の発祥は、pop'n musicの「[サイレント] 音楽」。楽曲終盤の8小節にわたる濃い密度の乱打がそれまでのボス曲を凌駕していたとして、それまでの「わけのわからないもの」を通り越した存在として命名された。
上記URLはこれを紹介するニコニコ大百科の記事だが、「どうしようもないもの」に比類する楽曲の選定に際してよく議論になる。機種間で比較するというのがそもそも難しいのは確かではあるのだが、ここで特に良く話題に上るのが「太鼓の達人」である。
「太鼓の達人」の楽曲に「どうしようもないもの」が存在するのか? これをゲームシステムの違いから考察してみようというのが本稿である。
譜面はここを参照。楽曲全体の譜面が参照できるが、問題の「どうしようもないもの」は122〜129小節目(左の青数字、以下同じ)である。
この部分のノーツ数を以下に示す。(130小節目は最初のラインのみ)
小節数 | 122 | 123 | 124 | 125 | 126 | 127 | 128 | 129 | (130) | 合計 |
---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
ノーツ数 | 23 | 23 | 24 | 21 | 22 | 21 | 22 | 26 | (2) | 182+2 |
BPM | 260 | --- | 7.38(s) |
この区間はBPM260の4拍子であるので、1小節当たり約0.92秒。つまり、7.4秒程度の間に184ノーツを捌く必要がある。秒間約25ノーツ。
なお参考までに前出「わけのわからないもの」を同様に計算すると、BPM187の4拍子で2小節、つまり約2.6秒。この間に76ノーツ降ってくるので、秒間約29.2ノーツとなる。
小節数 | 59 | 60 | (61) | 合計 |
---|---|---|---|---|
ノーツ数 | 36 | 36 | (4) | 72+4 |
BPM | 187 | --- | 2.57(s) |
つまり、以下のことが言える。
著者はメイン機種としていないので、譜面の特徴だけを一般論的に述べる。
ここで、譜面を離れてゲームシステムについて考える。
以上から分かることとして、ゲームシステム上pop'n musicはクリア自体が難しいように設計されている。クリアの下の分かりやすい線引きは「途中終了しないかどうか」程度しかなく、かなり厳しい条件になっているといえる。
一方、太鼓の達人はクリア自体はそこまで難しくはない代わりに、コンボを意識させる方向で高得点のハードルが高くなっている。
「長い発狂によってフルコンはおろかクリアが絶望的になる」という意味での「どうしようもないもの」は、太鼓の達人のゲームシステム上発生し得ない。
もし「どうしようもないもの」をどうしても設けたいのであれば、各機種毎にレベルを設ける必要がある。しかし、操作も譜面もシンプルなゲームシステムを持つ太鼓の達人は他機種から比べて簡単として見られやすい。ほぼ全ての楽曲は登場から1日程度でフルコンボ(ノーミス)が達成されることがその根拠として挙げられる。設ける必要があるハードルは相当なものになると思われる。
なお、この背景には、譜面を複雑にしたところで操作自体は単純なことから結局のところパターン暗記に収束してしまうことが考えられる。
なお、本稿の執筆直前に「ドンカマ2000」という新曲が登場した。この楽曲は面を叩くタイミングと縁を叩くタイミングが独立した速度で流れてくるという新しいタイプの譜面でリズムの把握が難しく、「どうしようもないもの」という観点からすると非常に興味深い。なお、この楽曲のフルコンボは約半月経ってから出現した。
そのシンプルすぎるゲームシステムゆえ、太鼓の達人には他機種と同じレベルの「どうしようもないもの」を生み出すだけのポテンシャルは限りなく低いと言わざるを得ない。譜面の構成要素もシンプルなことから暗記が効き、しかもそれで十分対応できることが理由として挙げられる。
「どうしようもないもの」の後に降ってくる、最終盤の高速連打部分を同様に計算してみる。
小節数 | 150 | 151 | 152 | 153 | (154) | 合計 |
---|---|---|---|---|---|---|
ノーツ数 | 19 | 18 | 18 | 24 | (5) | 79+5 |
BPM | 350 | 360 | --- | 2.69(s) |
2.69秒中に84ノーツ、秒間31.2ノーツ。なお153-154小節のみで計算すると、0.67秒中に29ノーツ、秒間43.3ノーツ。